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米、野菜栽培、養鶏、製塩も 風景とおいしさ 守りたい

2024年8月3週号

〝100の仕事ができる百姓〟に

福井市・志野佑介さん

 

 「自分が惚(ほ)れた景色を、この先も子供たちが見られるよう、守り繋いでいきたい」と話すのは、福井市南菅生町(みなみすごうちょう)でヒトモノコトを伝え繋がる商店「しの屋」を経営する志野佑介(しの ゆうすけ)さん(41)。2017年に千葉県から移住し、〝100の仕事ができる百姓〟を目指し、自分たちのやりたい農業で営農する。

 

 志野さんは東京農業大学出身で、学生の頃から〝半農半学生〟の生活を送っており、所属するサークルの仲間と野菜の生産や販売を行っていた。

 在学中に1年間休学してNGO(非政府組織)活動でケニアに行った時、人や生活などの豊かさについて考えるようになった。「日本に戻って、自分の思う豊な生き方とは、自然とともに生活し、食を生み出す農家さんだと思った」と話す佑介さん。卒業と同時に千葉県で就農し、生産やカフェ経営などに取り組んだ。

 知人の紹介で福井を訪れた際、越前海岸の風景や人の良さに魅了され、移住を決意。福井で知り合った妻の映里(えり)さん(39)と共に、米と野菜の生産や養鶏を始め、海に面した作業場をリノベーションし、製塩所とカフェを併設する同店をオープンした。

 現在は水稲1㌶と露地野菜50㌃、果樹40本のほか、700羽の養鶏やヤギの繁殖、製塩や海士(あま)漁など、山・里・海の恵みを生かした仕事を多岐にわたり行っている。

 志野さんは「圃場は、海岸沿いの急傾斜地で小さく、作業性や効率は良くない。シカやイノシシなど獣害も多く、頭を悩ませることが多い」と話す一方、「海が見渡せて自分が気持ちよく作業できる環境。さらに湧き水で生産する農産物はとてもおいしく、最高の場所」と笑顔をみせる。

 「不便な部分もあるが、丁寧に作った農産物を丁寧に売ることで、自然とお客さんとの信頼関係が生まれる。お客さんとのつながりで販売先も増えてきた」と志野さん。「これからもこの土地の良さと作物のおいしさを伝えながら、集落の人たちと協力してこの地域の景観と豊かさを後世につないでいきたい」と話す。

 

年間約100品種を生産。定期購入者に販売するほか、地元直売所に出荷する(写真提供=志野さん)

 

「楽しみながら心豊かに地域や自然に恩返ししていきたい」と志野さん

 

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