私の農業経営 強風被害で保険の大切さ実感
2024年9月3週号
福井市 有限会社棗の里農産・取締役 海道幸子さん(58)
耕作放棄地などを利用して、父の代からナツメを栽培しています。
ナツメは古くから庭先やお寺、お城などに植えられている身近な果樹ですが、日本で生産している農業者はほとんどいませんでした。私たちの主な生産圃場がある小幡町(こわたちょう)周辺は棗(なつめ)地区と呼ばれ、その由来からもナツメを故郷の特産にと父が思い立ち、1998年から栽培を始めました。
ナツメの収穫は8月下旬からの短期集中なので、毎回人材確保に苦労していました。今年は、地元の大学でナツメの生産を学んでいる学生らに声をかけてみたところ、多くの人がアルバイトに来てくれたので助かっています。
栽培当初は生産技術もなく、イノシシによる掘り起こしなどにも悩まされました。今でも課題は多いですが、防護柵などを駆使して獣害対策をしながら、農薬を使わずに生産しています。
ナツメの生産を考えた時から、万が一に備えてナツメの保険がないか探していましたが、果樹共済の対象品目ではなかったため、台風が来るたびに不安が大きかったです。2019年にすべての農産物が補償できる収入保険制度ができたことを知り、すぐに加入を決めました。
昨年は局地的な強風によりナツメが落果してしまい、収穫量が大幅に減少したので、保険金の支払いを受けました。補償の大切さを改めて実感しました。
昨年から近くの学校の児童や生徒らが収穫体験に来てくれて、父の思う地域貢献に少し近づけていることに嬉しく感じています。
これからも安全・安心で健康に良いナツメの生産を続け、地域の特産品にしていきたいです。
ナツメを収穫する従業員の岩見さん。収穫は9月いっぱい続く