虫から学ぶ自然
2017年5月2週号
虫から学ぶ自然
「虫は先生であり、こちらから問いかければ、いろんなことを教えてくれる」と話すのは大野市上舌の高津琴(こと)博(ひろ)さん(53)。農業(水稲4.5㌶、サトイモ20㌃)を営む傍ら、農業農村の多面的機能の大切さを伝える環境教育活動に取り組んでいる。
高津さんは、小学4年の時に下校途中で見つけた「ルリボシカミキリ」の色に魅了され、虫のとりこになった。以来、身近な昆虫について調査を続けている。農作業をしていると虫が目に入り、仕事に集中できないこともあり「田んぼで絶滅危惧種を見つけると嬉しくなる」と笑顔で話す。大学卒業後に地質コンサルタント職員として働いていたが、結婚を期に33歳で家の農業を継いだ。
草刈りが多面的機能につながっていると考える高津さんは、最低年4回は草刈りする。草を刈ることで、季節ごとの新たな植物が生え、そこに虫が生息するという。また、草の生育をコントロールできれば、カメムシの侵入もコントロールできるのではないかと考えている。通常は、多様な昆虫がしているが、除草剤を使用することで単調な植生となり、斑点米を出すカスミカメムシが大発生することがあり注意が必要という。ただし、その他の虫の影響からか、畦にカメムシが多いからといって、単純に斑点米が多くなるとは限らないという。分からない事ばかりだからおもしろいと高津さんは感じている。
また、本県や同市の環境アドバイザーを務め、生き物調査の出張授業も行っている。水生昆虫は水質を教えてくれるほか、生息域付近の立地や川の流速、さらに底質などの周辺環境も教えてくれると説明し、「スマートフォンは情報の収集はできるが、実体験を通じて五感で環境のことを学んでほしい」と期待を込める。
高津さんは「田んぼ周辺や身近な自然も、刻一刻変化している。地球温暖化で説明できる現象もあるが、それだけでは説明できない事の方がはるかに多い」という。「持続可能な農業を目指さないといけないが、一方で農薬に頼らなければならない時もあるというジレンマもあるる。今後は虫の予察をし、減農薬対策で少しでも虫の生態系を守れれば」と抱負を話す。