獣害ゼロhr行動あるべし
2017年8月2週号
電気柵パトロール欠かさず
「里の農地をイノシシから守ろう」と2015年に勝山市鹿谷町西光寺の、中川まつ子さん(67)ら主婦3人が立ち上がり、集落背面の里山に電気柵と点検用通路を整備。現在は、集落全体を巻き込み、当番制によるパトロールなど、16年は獣害被害無しの成果あげている。
同集落では、04・07年に水田周囲に2・3㌔㍍の電気柵を設置。また、14・15年には山側に約1㌔㍍の金網柵等を導入し獣害対策を図ってきた。しかし、いずれも管理がされず、金網柵にはつる性雑草の絡みや、柵下からのもぐり抜けの穴もあり、被害は減らず、ピーク時には、集落の水稲作付面積の1割以上に当たる1・4㌶に及んだこともあった。
「電気柵を張れば、獣害対策は終わりと思っていた。獣害で悩んでいるより、先ず自ら対策すべく行動をしようと思った」と当時を振り返る中川さん。獣害対策で先進集落の事例から学んだ「里山に人と獣との境界線」を作るため、14年に山の地権者から境界線を作る了承を得た。
山際から10㍍入った山中に、主婦3名で3ヵ月、延べ200時間を費やし、下刈りなどを行い、境界線となる通路を整備。そうした活動に影響を受け、電気柵を張る頃には、集落全体への取り組みに広がり、15年7月には1・5㌔㍍の境界線が完成した。
中川さんたちは集落の当番と共に、イノシシが集落は危険であると認識するよう、週2回パトロールを行う。主に電気柵の点検を行い、テスターでの電圧チェックのほか、電線のたるんだ場所を確認し、不備があった点をノートに書き込み、情報共有を図っている。特に、雨が降った翌日の点検を心掛けているという3人は、「雨は獣の臭いを消し、行動が活発になるため、電線のたるみも多く発生する。また、電線に枝落ちがあり、電流が流れない」と話すなど、活動の中から獣の習性や電気柵の効果的な設置・管理方法を習得してきた。
鳥獣害対策の指導にあたっている、県奥越農林総合事務所農業経営支援部の滝波正人主任は、「集落全体を動かした中川さんたちの実績はすばらしい。ぜひ、今後は集落単位から地域単位に広がるよう、経験した生の声を伝えていってほしい」と今後の期待を話す。