あわら温泉で育むトマト「ゆのしずく」
2018年10月4週号
「あわら温泉といえば、ゆのしずくと知られるような特産品を作りたい」と話すのは、神栄アグリテック株式会社代表取締役社長の福嶌篤((ふくしま あつし)さん(55)。
同社は、温泉水でトマトを栽培し「ゆのしずく」の商品名で販売している。真っ赤に熟した実を切ると、甘い香りが部屋いっぱいに広がり、味が濃くておいしいと評判で、昨年から地元の温泉旅館で提供・販売されている。
同社は耕作放棄地の再生に取り組む中、地域の資源を生かした新しい取り組みに挑戦したいと県や市に相談し、2014年に温泉水を使ったトマトの試験栽培を始めた。
あわら温泉は塩化物泉(日本名湯百選の中で7番目に塩分濃度が高い)で、温泉水をトマトに与えると、糖度が増すことがわかり、16年から宮崎大学と栽培方法の研究を進めている。
栽培しているトマトは大玉品種の「りんか409」。温泉水の塩ストレスにより生理障害の尻腐れ病になる玉もあるが、育てあげた「ゆのしずく」は、糖度約10度で、一般的なトマトと比べてビタミンCが約2倍、リコペンが約1・5倍といった特徴がある。
「近年は水耕栽培などで、収量を上げる方法がありますが、温泉水を使っての土耕栽培に手間と情熱をかけています」と話す福嶌さん。
一般的なトマトと比べて玉数、1玉あたりの重量ともに半分ほどの収穫だが、
「昔懐かしい味がする。他のトマトと全然違う」などといった消費者の声が生産の励みになっている。
同社は今後、栽培方法を確立させ、地元生産者に公開し、特産品にしたいと考えている。「観光に農業を掛け合わせ、経済的な相乗効果を出していきたい」と福嶌さんは話す。
「ゆのしずく」は10月下旬から11月にかけて500パック(1パック2個入り)の出荷を予定している。
▽神栄アグリテック株式会社=あわら市牛山▽園芸施設20棟(トマト、青ネギ、メロン)露地野菜17㌶(加工用キャベツ)