みんなで力を合わせて獣害対策
2019年7月1週号
高野捕獲班 高浜町高野
「獣害は農業、林業への被害にとどまらず、交通事故や、建物内への侵入、人間への威嚇など地域の生活を脅かす問題です」と話すのは、高浜町高野で「高野捕獲班」の班長を務める森下隆さん。同地区ではニホンザル、シカ、イノシシが多く出没し、防護柵や追い払い、捕獲による対策を続けている。
京都府にまたがる青葉山の中腹に位置する同地区。「獣害をなんとかしたい」と森下さんは2006年の区長就任をきっかけに、わな猟の免許を取得し捕獲従事者となった。14年には捕獲補助者7名と「高野捕獲班」結成。これまで累計640頭の有害獣を駆除してきた。
同地区では「青郷A群」と呼ばれる100頭を超えるサルの群れが出没する。町は個体に発信機を取り付け、動きを監視。1日2回のメールで、群れの位置や移動予測情報を配信している。サルが下りてきた際には、住民同士が連絡を取り合い、ロケット花火や爆竹で山に追い返している。
里を荒らす加害個体を減らすため、区内に9台の捕獲檻を設置し、捕獲班が管理している。中でも効果が高いのは14年に導入した遠隔監視・操作ができる「まる三重ホカクン(㈱アイエスイー 三重県伊勢市)」。設置前と比べて、サルの捕獲数が4倍増となった。「仲間が捕まると警戒するので、豆類など好みの餌で誘き寄せします」と森下さんは話す。また、昨年からくくり罠を始め、シカの捕獲数が増加した。
農作物が狙われにくいのは、電気とワイヤーメッシュを組み合わせた高さ2㍍ほどの複合柵。農地は所有者が複合柵で防御し、維持管理している。野菜クズなど餌になり得る物は野外に放置しないよう徹底し、近年イノシシによる被害はほとんど防げているという。「被害にあっても、対策を重ねて継続することが重要です。若い方にも興味を持ってもらい、新しいアイディアや技術が出てくることに期待したいです」と話す。
同町産業振興課主事西野彰記さんは「近年、獣害対策の集落点検に力を入れています。高野区をモデルに『自分たちの地域は自分たちで守る』といった一人一人の意識を高めて、連携を強化していきたいです」と話す。
「9KVの電圧です」と複合柵の前で森下さん(中央)と捕獲班の皆さん。