リゾット・パエリア向きの新品種米を開発
2020年10月2週号
リゾット・パエリア向きの新品種米を開発 福井県農業試験場
県農業試験場は、調理専用米の「越南300号」を育成した。リゾットやパエリアに適しており、アルデンテという歯応えが残る食感が特徴だ。魚介類や野菜など地元の食材と合わせた料理やレストランとの提携をすすめ、洋食分野で米の消費拡大を図る。
「越南300号」はインド型のデンプンを持つ米麺用の「越のかおり」と、あっさりとした食味で日本型のデンプンを持つ「あきさかり」(県農業試験場開発)の交配だ。10年の歳月をかけ、インドと日本両方のデンプンの性質を持つものが選び出された。県内のシェフからは「煮崩れしにくく、アルデンテの状態を長く保つ」と評価を受けている。また、リゾットの代表的な品種であるイタリアの「カルナローリ」、パエリアはスペインの「バレンシア米」と比較すると「越南300号」は日本人が親しみやすい味に仕上がるという。
稲はアキサカリの性質を受け継ぎ、稈長が低く倒れにくい。10㌃あたりの収量は、約620㎏と多収。葉いもち病に対してはやや弱く、適期防除が必要となる。直売ルートのある農業者や6次産業化に取り組む農業者が生産に向いている。
開発者の福井米研究部育種研究グループ主任研究員・農学博士の小林麻子さんは「食の多様化や人口減少などの要因で、米の需要は年々大きく減少しています。「越南300号」は他と違う面白い米をつくろうと取り組みました。パスタのような新しい米の食べ方が広がり、需要が増えることを期待しています」と話す。
県農業試験場は、これまで良食味水稲品種の「コシヒカリ」、2017年には「いちほまれ」18年には大吟醸用の「さかほまれ」など43品種を育成している。新品種の開発には10年以上かかり、未来の需要に応えるよう、多様な研究が続けられている。
「越南300号」の愛称は今秋に決まり、同試験場ホームページなどで公表される。
▽福井県農業試験場
TEL:(0776)54-5100
▽写真
越南300号は籾の先端に茶色の点があります」と小林さん
「オレンジご飯」ニンニクとコンソメで味付けし、オレンジジュースで炊く