越前水仙 魅力を次代に
2022年2月1週号
福井市水仙振興プロジェクト「ノカテ」
地元農家に学び情報発信 ブーケや花束の販売も
「当たり前にある景色が、かけがえのないすばらしい風景」と話すのは、福井市水仙振興プロジェクト「ノカテ」代表 髙橋 要さん(33)。2021年に国の重要文化的景観に指定された「越前海岸の水仙畑 下岬」のある同市居倉町で、メンバー5人とともに、越前水仙の魅力を発信しながら栽培を学んでいる。
髙橋さんは山形県出身。大学を卒業後、恩師の紹介で、15年に福井市殿下地区の地域おこし協力隊に参加した。
福井市の風土や人の温かさに魅了されたという髙橋さんは、地域おこし協力隊の任期終了後も同市に残り、地域づくりに貢献していた。
19年、同市の実施する企画で越前水仙と出合い、その魅力と営農の厳しい現状を知った。
スイセンの収穫は12月ごろから始まる。早朝の寒さと海から吹く風の中、険しい斜面での手作業で、1本ずつ丁寧に選別していく。こういった厳しい作業環境に加え、生産者の高齢化、後継者不足という課題に直面している。
スイセンの振興と生業づくりを目指す「ノカテ」プロジェクトは20年に始まった。より多くの人にその美しさと現状を知ってもらい、地域振興を図ろうと、30~40歳代の県内外在住者6人で活動する。
プロジェクトでは、生産から販売までの流れを地元農家から学び、フェイスブックなどで情報を発信。流通に乗れなかったスイセンを加工し、ブーケなどに加工し販売している。
「スイセンの魅力は、花の美しさだけでなく、咲いている風景も美しい。大変だが、昔から続けられてきた地域の営みが、長い年月をかけてその土地ならではの特徴的な景観を築いた。当たり前に続けたことをこれからも守り続けることが大切だ」と髙橋さん。
「自分たちの活動で、若い人たちに地域のすばらしさと現状知ってもらい、興味を引くことが振興や就農への一番の近道。福井の当たり前にある大切な暮らしや営みを、次の世代に受け継ぐ足掛かりになれたらうれしい」と笑顔で話す。
髙橋さん(中央)とノカテのメンバー。ノカテとは「・・・の糧」の意。「自らの活動が誰かの糧になれたら」という思いを込めて命名した