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公務員から農家に 魅力示したい

2024年7月2週号

ゼロから始めた農業 安定経営目指して

美浜町・Grand farm(株)

 

 「若い人が農業を職業として選んでくれるようにしていきたい」と話すのは、Grand farm(ぐらんふぁーむ)株式会社・代表取締役 鳥羽宏昇(とば ひろのり)さん(37)。美浜町新庄の中山間地で水稲17㌶、白ネギ4㌶を営農する。

 

 鳥羽さんは元々公務員で、農業者をサポートする側として働いていた。その中で、都内の飲食店経営者などと知り合い、同町のおいしい米や農産物を提供してほしいとの要望を多く聞いた。一方で、町内では高齢化による離農者が年々増えはじめ、担い手不足の深刻さも感じていた。「生産者と企業の架け橋として働いたことで、自分が就農し、農業の良さやおいしさをつなげていこうと思った」と当時のことを話す。

 

自ら販路を開拓 

 就農を決意した鳥羽さんは、12年勤めた職場を退職し、地元・新庄地区の耕作放棄地や、知人らに声をかけ、周辺の農地14㌶ほどを請け負い、2022年に同会社を設立。販路も自ら営業に回り、都内や首都圏の飲食店へ出荷する。

 また、農業を他の企業と同様に経営していくため、水稲だけでなく単収の高い白ネギの露地栽培もあわせて営農を開始した。

 設立前から、栽培スケジュールや生産についてのプランを入念に練ってから開始したものの、初年度は中山間地特有のイノシシやシカ、サルの獣害に遭い、予想の収益には到底及ばなかった。「実際に営農してみて、作業と経営を一緒にしているのでは、体は持たないし、利益も上がらないことを実感した。友人や知り合いからアドバイスやアルバイトなどの協力のおかげで、色々と助けられた面も大きい」と鳥羽さん。 「3年目を迎え、経営についての課題や次のステップが見えてきた。新庄地区の米や野菜は評判が良く、取引先やお客さんからのおいしいという声は力になる」という。「大変なことも多いが、中山間地でゼロからでも安定した農業経営できることを証明し、農業にチャレンジしたいと思う若い人の後押しとなられるよう頑張っていきたい」と笑顔で話す。

 

 

「学生の頃は野球少年で、プロテストも受けた。今でもそのつながりがあり、草野球などで楽しんでいる」と鳥羽さん(提供=鳥羽さん)

 

有機肥料で栽培する白ネギの苗を定植する鳥羽さん(右)。夏ネギの収穫は7月から始まる(提供=鳥羽さん)