越前おろしそば 丸岡在来のうま味追求
2020年12月1週号
蕎麦工房 お仙 髙山重則さん(坂井市丸岡町)
「完熟したソバ本来の甘味と香りを出した『越前おろしそば』を提供したい」と話すのは水田農業(4・2㌶)の傍ら「蕎麦工房お仙」を経営している髙山重則さん(坂井市丸岡町小黒)。ソバの生産から乾燥調製、製粉も一貫して行い、低価格でそばを提供している。
ソバは嶺北地方で地区ごとに在来種がある。髙山さんは丸岡在来種の完熟したソバの実を自家の減圧低温乾燥機を使い風味良く仕上げる。粒は大中小に分け、食味とデータ分析が一番良い中粒を店で提供している。製粉は福井市美山地区の笏谷石使った自慢の石臼で粉をひき、旨味を引き出す石臼の目立て(使い方)を後継者にも伝えている。
髙山さん曰く、1471年(文明三年)ごろ朝倉孝景が一条谷城の城域内でソバを栽培したことが越前そばの始まりで、1601年(慶長6年)に武生の城主本多富正がそば師金子権左衛門に作らせた、大根おろしを添えた麺状のものが「越前おろしそば」の始まりだという。
髙山さんは丸岡町で、まだソバが栽培されていない1987年に種を買い水田で栽培を始めたが、種の品質にばらつきがあり良い品物ができなかった。このことがきっかけで丸岡在来種の種を確保しようと、家庭で栽培されているソバの種を集め、甘味と粘りが良いものを選び増やした。行政の支援もあり3年で安定した種の量が確保でき、同町の生産量は一気に伸びた。
店は2005年から開いていたが、ここ5年ほど休んでいた。髙山さんのそば打ち教室に通っていた坪田和伸さんが加わり、19年11月に再びオープン。店は丸岡ICに近く、地元や県外から客が訪れている。「経営努力次第で低価格でそばを提供できる。今後は店舗を増やして多くの人に越前おろしそばを食べてもらいたい」と話す。
▽蕎麦工房 お仙 坂井市丸岡町小黒73-6-6
TEL:(0776)68-1025 木曜定休
店での髙山さん㊧と坪田さん。笑顔が絶えない
大根おろしが入った越前おろしそば。左上は髙山さんが生産する辛味大根。右上はそば湯
握って形つく粉がいいと髙山さん