山中に電柵設置し獣害対策 地域はみんなで守る
2022年9月4週号
定期的に巡回し近づかせない 獣害が激減 効果を実感
越前町小曽原地区 区長 山内愼治さん
「みんなで整備した電気柵が、農業者だけでなく、住民全員が安心して住める獣害対策となるよう期待したい」と話すのは、越前町小曽原(おぞわら)地区の区長・山内愼治(やまうち しんじ)さん(66)。同地区では今年8月に住民らと協力し、地区の東側にある水上山(みずかみやま)の麓2㌔の山中に、集落エリアに沿うよう電気柵を整備し、イノシシやシカの獣害対策に取り組んでいる。
水稲34.5㌶、飼料用米35.4㌃、ソバ47.6㌃を栽培する同地区では、これまで農業者個人が圃場周辺に電気柵を設置するなどの対策を講じていたが、イノシシやシカによる被害が年々増え、田畑だけでなく住宅地にも出没するようになってきた。
何とかしなければと考えていた山内さん。今年1月、区長の役職が回ってきたこともあり、住民の生活を守る役目として、低コストで地区全体に貢献できる獣害対策はないかと模索した。
そこで新たに取り組んだのが、山中に電気柵を設置し、人と獣の境界線を引く方法だ。設置には山際の農道のほか、5~10㍍ほど山中に入り込んだところにある獣道を利用する。
電気柵の緩みがないか定期的に見回りを行うことで、獣の縄張りに人の気配を残し警戒させることができる。さらに、柵にふれることで電気ショックを与え、獣が集落に近づかなくなることが最大のメリットだ。
8月上旬から始まった電気柵設置作業には、設置に興味を持った非農家の住民らもボランティアで参加し、中旬には設置が完了した。
助言・指導を行った丹南農林総合事務所の滝波正人主任は「獣害対策は地域づくりの一つ。最近は人の意識が自然から離れてきており、集落内の環境対応力や合意形成力が弱くなってきている。これからも集落一丸となりどんどん進めていってほしい」と活動に期待する。
「以前は山際の中生(なかて)の圃場は必ずイノシシの被害に遭っていたが、設置後は、掘り起こしの跡や集落への侵入などがなくなり、被害が激減した」と早くも効果を実感する山内さん。「これから活用していく中で課題を見つけていき、その課題をしっかり解決しながら、地域全体の獣害対策に取り組み、住民が安心して暮らせる住みやすい環境づくりに取り組んでいきたい」と意気込みを話す。
雨上がりや風が強かった日の翌朝には電圧を確認し、有志2~3人で電線が緩んでいないか確認して回っている
電圧をチェックする山内さん